畑で考えたこと(孫弟子の骨折)
孫弟子の一人が骨折しました。全治1ヶ月。
鬼ごっこ中、逃げている時に転んだようで。
その場を見ていた大人がいなかったので、
子供が話した内容から想像するしかありませんが、
ただの遊びの鬼ごっこでは無かったのかも知れません。
母弟子は言います。
「彼の日頃の言動と行動が、そういう状況を作ってしまっているのでしょう。」
自閉症スペクトラムの人は、人の気持ちになって考えることや、
その場にふさわしい言動、行動を取るのが苦手と言われています。
それは生まれつきのもので、脳機能の発達の仕方の違いから起こること。
彼らに悪気はないのです。
だから、しょうがないな。
そう思います。
しょうがないから、時間をかけて教えていきます。
大目に見てとは言いません。でも、長い目で見てくれたら嬉しい。
自閉症スペクトラムは100人に1人から2人いる、と言われています。
少数派の彼らは、多数派のやり方を知る必要があるでしょう。
この社会は多数派の脳によって、作り出されているのですから。
理解することは出来なくても、そういうものだと知っていれば、
社会の中で、少しは生きていきやすくなるのではないか、と思うのです。
「あと2,3本骨を折らないと、わからないかも知れないね。
そうならないように教えていきたいけど。」
自分は悪くない、ただ転んだだけ、と思っている様子の孫弟子を見て、
母弟子はそうも言います。
でも、なぜ彼らばかりが、こんなに負担が大きいのでしょうか。
なぜ少数派ばかりが、多数派に近づく努力が必要なのでしょうか。
だって、自閉症スペクトラムの人達が、そうでない人達の事を理解できないように、
そうでない人達も、自閉症スペクトラムの人達を理解できないでしょう?
理解できないのは、お互いさま。
だから、お互い許して、許されて、上手いことやっていこう。
それが当たり前になれば、自閉症スペクトラムの人達にとっても、
そうでない人達にとっても、とても居心地の良い社会になると思うのです。
そのために、私達に何ができるだろう。
畑を耕しながら、そんなことも考えたりするのです。
畑で考えたこと(師匠の畑)
11月中旬。
師匠の畑は白菜、大根、水菜など、鍋の具材の野菜達が、所狭しと育っています。
そして、畑に来た孫弟子達に惜しみなく、どんどん収穫させてやるのです。
お盆が明けて、9月に入り。
母弟子達は、全く畑に足を運びませんでした。
運べなかったと言いたいですが・・・
命の危険を感じる暑さと、太刀打ちできない蚊の集団。
抜いても抜いても生えてくる雑草。
もう、キュウリもナスもピーマンもいらないの。
畑に行くくらいなら、スーパーで買った方がずっと楽だもん・・・
やっと畑作業を再開したのが9月中旬。
師匠の畑も茶色の土だけが見えていて。
良かった、師匠も流石にあの暑さの中では、家で休んでいたのだろうと思ったものです。
それが。
10月に入ると、師匠の畑はだんだんと緑色を増し、あっと言う間に野菜でいっぱいに。
師匠はあの暑さの中でも、種を撒いていた。
種を撒けば、収穫がある。
野菜作りにおいては、ほぼ当たり前のことだけど・・・
母弟子達の子育てにおいても同じでしょうか。
1粒ずつでも種を撒けば、いつかは豊かな実りをもたらすでしょうか。
今は見えないけど、土の中で芽を出す準備をしているのでしょうか。
出てきた芽は見逃さないように、目を凝らして。
枯らさないように、水をやって。
どんな実がなるのか、今すぐ知ることができたら良いのに、と思うのです。
さて。
9月に久しぶりに畑でお会いした時、師匠は仰りました。
「おぅ!もう野菜作るの辞めたと思ってたぞ!」
「見てみろ、畑を。何から手をつけて良いか、わからん状態になっとるぞ!」by 師匠
「ですから、辞めませんてば。」 by 母弟子
これがしばらくの間、会うたびに繰り返す挨拶になったのでした。
ではまた👋
「種蒔き」グリーンピース編(2021)
ある風の強い日の午後。
母弟子Tは、到来が迫っている玉ねぎ苗の為、畑を必死で耕しておりました。
苗は入手したら、出来るだけ早く植え付けてしまいたいものです。
母弟子邸で保管中、思いがけず枯らしてしまう・・・。そんなの考えるだけで嫌。
そこに師匠が現れます。
夏の最中に入院された師匠は、退院後は畑に来る頻度を減らしています。
午後はあまり作業はしないと仰っていましたが、師匠宅の前を足早に通り過ぎる、
母弟子の姿をキャッチしたのでしょうか。
「おぅ、やっとるな!」
師匠は母弟子の耕しっぷりを見て、笑います。
「よくまぁ、玉ねぎの為にこんなに深く掘ったなぁ。見たことねぇな。」
「しかし、ようやったな!そこまでやるのも大変だったろう。」
玉ねぎは土の上に、あの丸いのが出来上がります。
なので、土の下の方は、そんなに下の方まで柔らかくなくてもOKなのです。
「最初に言っておいてくださいよ。」
でも、母弟子は同じ深さで掘り続けます。途中から浅く耕すなんて、なんだか中途半端。
深いなら全て深く。
作業が終わりに近づいた頃、ご自身の畑から師匠がこちらにいらっしゃいます。
さて、ここからグリーンピースの話。
師匠はおもむろにポケットから何かを取り出し、母弟子に授けます。
「グリーンピース」と「さやえんどう」の種。
母弟子が苦手とするサヤ系です。
以前師匠は仰っていました。
「豆の種が余ってるから、今度やるからな。」
種には有効期限があり、今年余った種を来年撒くことは、あまりしないようです。
種にも鮮度、蒔かれ時があるのです。
苦手系の野菜の種であっても、ありがたく頂戴します。
弟子は師匠の気持ちを大切に受け取るものです。
師匠がこの冬栽培するものを、弟子も栽培するのが賢いやり方なのです。
(やるとしたら、玉ねぎの植え付けが終わってからだな・・・)
(第3畑のキュウリ引っこ抜いた跡地に植えるのが一番楽かな・・・)
母弟子は心の中で、一番楽な方法を考えます。
「おぅ、どこに植える予定だ?第1畑はダメだぞ。スナップエンドウで大コケしてるからな。
あそこの土はエンドウ豆には向いとらん。」
「大玉トマト植えていた跡地なんか良いと思うぞ。土も柔らかくなってるし。わしならあそこに植えるな。」
師匠が結論を出しました。
こんな時、弟子は自分の考えを主張しないことです。
この一帯の土壌を知り尽くした師匠が指定した、最適な場所なのです。
大玉トマトの跡地に植えることにしました。
玉ねぎの植え付けが終わったら。
「よし!シャベルと苦土石灰持って来い。8:8:8と鶏糞もな。」
・・・・
師匠は只今から種を植える気です。
母弟子は、深く畑を耕したところです。余力は残っているでしょうか・・・
しかしやるのです。
第3畑の大玉トマト跡地に向かいます。
だんだん第4畑のジャガイモ(アンデスレッド)も視界に入ってきます。
「おぉ!ちゃんと土寄せやってるやないか。」
師匠からお褒めの言葉です。
「2日前にやりました。でも今日の強風で、ちょっと倒れそうですね。」
どれどれ。
師匠がジャガイモに近づきます。
「こんなの土寄せじゃねぇ!もっともっと土を盛るんだ!鍬、持って来い!」
グリーンピースを植える前に、ジャガイモの土寄せをします。
するとどうでしょう。
母弟子Tが無くしたハサミを、師匠が土の中から掘り出したではないですか。
なぜこんな場所から。全く検討違いの場所を探していました。
まさか・・・
師匠が・・・
「たわけたことを!」 by師匠
ジャガイモの土寄せを終わらせ、いざグリーンピースです。
「シャベル持って来い。2人でやっちまえば、これくらいの広さ、あっという間だ。」
1本持っていきます。他の2本は第1畑にあります。
「なんだ!1本しかないのか!何をやっとる!」
「第1畑も頑張って耕しているんですってば。」
師匠は一人で掘り起こします。
母弟子は苦土石灰と肥料を撒きます。
愛読書には、苦土石灰と肥料は同時に撒かない、と書いてあります。
化学反応が起こって、何やら野菜には良くない何かが出来てしまうと。
関係ありません。
今までだってそうやって野菜を収穫して来たのです。
師匠が指示したことを、弟子は淡々とこなして行けば良いのです。
師匠が先ほどから腕にはめている時計を、頻繁にチェックしています。
これはいけません、水戸黄門の時間が迫っている合図です。
「師匠、後は私に任せて、水戸黄門を見にお帰りになってください。」
「任せられるか!やっちまうぞ!」
「続きは今度にしましょうよ。」
「何言っとるか!今晩雨が降るんだ。だからその前に種蒔いちまうのが良いんだ!」
「でも水戸黄門、見逃してしまいますよ。」
「本当に間に合わなくなりそうだったら、わしゃ、すっといなくなるから。」
母弟子はリュックの元に急ぎます。スマホを取りに。
出来上がった畝の様子、植える種の様子、全部記録に残すのです。
「こんな時間のない時に、写真撮ってる場合か!」
師匠の言葉は聞き流します。撮ってる場合ですから。
さて。
無事、師匠は水戸黄門が始まる時間に、ご自宅に戻ることが出来ました。
思いがけず育てることになったグリーンピース。
もしかしたら、モロッコ豆と同じようなミラクルを、起こしてくれるかも知れません。
ではまた👋
「植え付け」玉ねぎ編(2021)
「畝作り」玉ねぎ編(2021)より続く
「植え付け」玉ねぎ編(2021)
玉ねぎ苗の予約注文から3日後、母弟子Tの携帯電話が鳴りました。
用事があって電話に出られなかった母弟子Tは、園芸店からの着信履歴を見て、胸騒ぎを覚えます。
「もしかして、早生は入荷できなかったのではないか・・・」
これは困ります。
素人には、一番育てやすいと考えられている早生から始めるのが、無難なやり方でしょう。
最初に難易度が高いものに手を出して、早々に挫折を味わうのは避けたいものです。
「もしかして、もう入荷してしまったのかも・・・」
これも困ります。
第3畑の玉ねぎ用の畝は、まだ準備中です。
週末に入荷すると言われたので、それに合わせて施肥とマルチングをする予定でいるのです。
今日入荷されたとなると、5日間も苗を母弟子邸で預かることになるのです。
途中で枯らしてしまったら・・・・。そんなの嫌。
意を決して、園芸店に折り返し電話をしてみます。
入荷されちゃってました。
色々予定を変更します。
まずは母弟子Sの都合を確認します。そして、師匠のアポを取ります。
いつもは、師匠が畑に出ていそうな時間を狙って畑に行き、指導を受けます。
でも、一度も経験の無い作業をする時などは、前もって師匠に指導を依頼するのです。
師匠も「玉ねぎを植え付ける時は、呼んでくれ。」と仰っていました。
師匠がパークゴルフに行く曜日は避けます。
そして、「水戸黄門」が始まるまでに、作業が終わるような時間帯で依頼します。
師匠の楽しみを邪魔するようでは、弟子として失格なのです。
師匠の奥様の携帯にメールします。
「OK」です。
その日、施肥+マルチング+植え付けを一気にやってしまうことになりました。
愛読書には、少なくとも1週間前までにはマルチングまで終えておくと書いてあります。
でも大丈夫です。
これまでも、1週間前に万全の状態になっていた畝は1本もありません。
それでも、美味しい野菜が収穫できているのですから。
問題になるのは、母弟子達の体力です。
一体、どれだけの時間がかかるのでしょう。
・・・そんなことは言ってられません。
さて。
植え付け当日、既にご自身の畑の世話を終えられて、師匠は弟子の到着を待ってくださってました。
弟子たるもの、師匠より早く畑に出るもの。
いつかは、きっと。
早速師匠はマルチングを施す用の畝の作り方を実演します。
「ほれ、やってみろ。」
マルチングは、これで3回目の実践。
しかし全く上手く出来ません。まだまだ経験不足でしょう。
師匠も明らかに見ておれなくなっています。
「もう1回見ておれよ。」
このやりとりを繰り返すうちに、畝はだんだん出来上がっていきます。
「ほら師匠頑張って。あと少しで端っこまで行きますよ。」
最後は応援に力を入れます。
畝が出来たら、黒ビニールでマルチングします。
これは、隣畑の準師匠から譲り受けたものです。
既に苗を植え付ける為の穴が空いています。超便利。
さぁ、200本植えていきます。
孫弟子Rは既に玉ねぎの植え付け作業に興味を失っています。
母弟子達が作業している畝の後ろで、一生懸命何かを埋めています。
見れば、引き抜いた野良大根や、土の中から出てきたサツマイモの尻尾など。
どうもぬか漬けの感覚で埋めているようです。後日掘り出した時が楽しみだとも言っています。
苗を植えろとは言いません。
彼が畑に来る目的は、日光に当たること。
これでOKです。
植え終わりました。
能力換算では、師匠、母弟子2名、孫弟子Rの合わせて約2,5人くらいで、2時間。
頑張りました。
師匠が。
「収穫までに、どのような作業をしたら良いでしょう」
師匠に尋ねます。
「なんもやらんでいい。やりたけりゃ、1月に肥料をやっとけ。」
1月に肥料をやるのを忘れないようにします。
師匠が仰ったことは、弟子は実行するものです。それが修行なのです。
そうすれば、春には美味しい玉ねぎを収穫することが出来るでしょう。
ではまた👋
勇気ある撤退(モロッコ豆編③)2021
勇気ある撤退(モロッコ豆編②)の続き
勇気ある撤退(モロッコ豆編③)
もっともっとモロッコ豆を食べたい。
美味しさを知ってしまった母弟子の情熱は止まることを知らず、
切り戻し作戦が失敗に終わった後も、次の一手を打つのです。
時は既に9月中旬。
モロッコ豆の撒き時は、とっくに過ぎています。
師匠に尋ねます。
「モロッコ豆は今から植えたら育つでしょうか?」
「この時期に植えた話は聞いたことないな。」
師匠の奥様にも聞いてみます。
「聞いたことないわね。寒さに弱いんじゃないかしら。」
奥様のご友人(婦人準師匠。沢山の方が野菜作りを教えてくださいます)にも尋ねます。
「やったことないけど、今の時期に採れたら良いわね。上手くいったら教えてちょうだい。」
勝算は低そうです。
ただ、「植えたけどダメだった」という経験をされているわけでは無いのです。
しかも、モロッコ豆が所属するインゲンの世界では、1年に3回も収穫でき、
「三度豆」と呼ばれるものもあるそうで。
同じインゲンなら、モロッコ豆にもポテンシャルがあると考えて良いのではないでしょうか。
3度あることは、4度ある。
やってみれば良いのです。迷う理由はありません。
夏野菜の代表だと思われているキュウリだって、「秋採りキュウリ」があるのです。
合わせて、旬の時期を外して野菜を栽培すると、どうなるのか知りたい、と言う気持ちもあります。
そして。
ポットに撒きます。
100%芽が出ました。
畑に移植します。
母弟子Tの庭でプランター栽培も並行して行います。
最後に大豊作を願います。
そして急激な気温の低下と上昇を繰り返す、豆には過酷な毎日。
そのような状況の中、11月に入ったモロッコ豆は・・・
畑のモロッコさんも、プランターのモロッコさんも、ちょっと実をつけている。
プランターの方が、少しだけ出来が良いと言えそうですが、
どちらにしましても、夕食の一品になるには量が足りません。
さて。
秋にモロッコ豆を栽培しても、豊作は望めないということがわかりました。
でも、これで良いのです。
今年やってみなければ、来年きっとやったでしょう。
来年は長期間収穫するのを目指すのではなく、植える畝を増やして、
短期大量型を目指せば良いのです。
今から土作りをして、とっておきの土壌にモロッコ豆を撒こうではないか。
気持ちを新たにした母弟子は、近所に買い物に出かけます。
そして、立派なモロッコ豆を見つけるのです。
「なんで!?どうやって!?」
それとも瀬戸内の気候がモロッコさんに適しているのでしょうか?
母弟子Tは早速ネットで調べます。
なになに?
モロッコ豆は地中海沿岸でも盛んに栽培されているとな!?
モロッコ視点だと、瀬戸内と地中海に、何か似通った点があるのでしょうか?
あれ? モロッコは地中海沿岸にある国・・・
じゃぁじゃぁじゃぁ・・・
「モロッコ」と言う名前は、ただの映画由来では無いということですね?
種の会社、なんと素晴らしいネーミングセンス!
ではまた👋