「植え付け①」茎ブロッコリー(スティックセニョール)編(2021)
ある12月の暖かい日。
母弟子Tは、日課となったスティックセニョール苗のお世話に精を出します。
土が乾きすぎていれば水をやり、青虫に食べられていれば青虫を成敗し、
強風に煽られて傾いた苗は、優しく立て直し、土寄せをして、「大丈夫?」と声をかける。
その甲斐があったようで。
母弟子Tの過剰な期待に押し潰されることもなく、苗達は順調に成長しました。
母弟子Tと、季節外れの暖かさと、母弟子T邸に特設した家庭用ビニールハウス、
この三つ組での勝利と言えるでしょう。
しかし。
母弟子Tは少々気が重いのです。
一体、この大量の苗をどこに植えれば良いのか・・・。
第1畑にスティックセニョール用の畝は用意してあります。
しかし、1畝だけ。
園芸店で苗を調達して植える予定で作った畝ですが、肝心の苗が売り切れで。
結局種から作ることにした母弟子の作業を待って、
1ヶ月間前からスタンバイしている畝ではあります。
でも、これだけのセニョールを引き受ける広さはありません。
もちろん、「かぐや姫の野菜畑」は土地に困っていないので、
耕せばいくらでも野菜を植えられるのです。
耕せば。
猫の手でも借りれるならば。
でも、闇雲に大量のセニョールを栽培するのは、いかがなものでしょう。
食べきれないほどのセニョール達は、行き場を無くし、
育ての親の母弟子により、畑の肥やしとして土に還される可能性もあるのです。
手塩にかけたセニョール達が、疎ましい存在になるのは避けたいものです。
ならば、ならばいっそ、苗のうちに・・・。
「畑に出陣するレギュラーメンバーを選抜する時が迫っている。」
そう言うことです。
母弟子Tの手厚い世話を受け、まさしく、ぬくぬくと温室育ちの苗、計46株。
どれも同じだけの手間と愛情をかけたセニョール。
この中からレギュラーになれるのは、16株。
残りの補欠達の運命やいかに!
選ぶ方も、選ばれなかった方も、苦い思いが残るものです。
そこへ。
健康の為、近所のご友人と一緒にwalkingをしていた、師匠の奥様が通りかかります。
「あら、上手に育てたじゃないの〜!ちょっと時期が遅いけどね。ふふふ。」
「これだけ育ったなら、もう畑に植え付けた方が良いわよ。今週暖かいし。」
(そうだ!)by 母弟子T心の声
「数株、いかがですか?」by母弟子
「あら、良いの?じゃ、裏庭の畑に植えようかしらね。」by奥様
奥様にひっついて、26株の苗達を連れて師匠宅にお邪魔します。
奥様が裏庭に向かって声をかけます。
「けんちゃ〜ん!ほら、けんちゃ〜ん!ふふふ。」
「母弟子さんがブロッコリーの苗を分けてくれるそうよ!」
先月84回目の誕生日を迎えられたけんちゃんが、裏庭畑からこちらにいらっしゃいます。
「おぉ、上手く育てたじゃないか。これだけやれれば、立派なもんだ。」
久々にアメをGETしました母弟子です。
さて。
奥様が、裏庭畑に出陣するメンバーを選抜にかかります。
予想通り、母弟子ならレギュラーには選ばない、小柄な選手を4株選ばれました。
見習うべき大人の対応です。
そこへ母弟子Tは、レギュラー候補の苗を追加していきます。
「立派な苗は母弟子さん達で育てなさいよ。こちらは上手くやるから。」by奥様
「いえ、けんちゃんに育てて頂いた方が確実なので、可能性が高い方を育ててください。
私達が失敗したら、代わりにそこから収穫しますので。」by母弟子
「たわけたことを!」byけんちゃん
結局。
苗達は、全てレギュラー入りし、師匠宅の裏庭畑ではなく、
山の上の師匠の本陣畑に出陣することになったのであります。
師匠が26株のセニョール達を連れていく後ろ姿を見守りながら、
「美味しく育ててもらえよ・・・」と、つぶやいたか、つぶやかなかったか。
そして翌日。
残りの20株を引き連れて、母弟子達と孫弟子は、第1畑に向かうのです。
ではまた👋